僕が今年の9月4日に、フィリピンはセブ島で、ルイヴィトンのカードケースを失くしたことは以前の記事で書いた。
そして、いつものようにFacebookのタイムラインを眺めていた矢先、その天使は舞い降りてきた。
今までずっと気がつかなかったけれど、メッセージ欄が【その他(1)】となっている。
なんだこれ。
何の気なしに開いてみると、聞いたことも無いベロニカ(仮名)というフィリピン人女性からのメッセージだった。
“Hello good evening Shinnosuke-San.
Are you the Shinnosuke Saito that I’m looking for? Are you the owner of the CARDs that was left in the Taxi last week here in Cebu?”
〈こんばんは、慎之介さん。あなたは私が探している慎之介さんですか?あなたは、先週セブ島でタクシーの中にカードを落とされた方ですか?〉
東南アジア旅行の最中、カードケースを失くして激しく落ち込み、激しく苦労した覚えがあるだけに背筋にビビビっと刺激が走った。
“My father is a taxi driver and he was the one who found it. Are you still in Cebu this time so I can give it back to you your cards. Take Care.”
〈私の父はタクシーの運転手で、彼がそのカードケースを見つけたんです。もしもまだセブ島にいらっしゃるなら、私がお返ししますよ。〉
うおおおおおおおおおおおおおお!
こんなメッセージが届いていたなんて、ちっとも気がつかなかった。友達からのメッセージじゃなかったため、普段使わない【その他】フォルダなど見向きもしなかった。
ケースには、クレジットカードが3枚と、免許証とPASMOが入っていたが、すべて再発行手続きを済ませたため僕の中では落着していた。
さっそく僕は彼女に返事をした。これ以上どう表現すればよいのか分からないほどの謝意を込めて、英文を打った。
そして彼女は、わざわざAir Mailで送り返してくれるというのだ。
なんという天使に恵まれたのだろう。
ふと気がついたのだが、ベロニカは初めから僕のことをShinnosuke-Sanと日本の敬称をつけて呼んだ。きっとどこかで日本に縁がある人に違いない。するとやはり、ESLの英語教師だった。以前はオフラインで、現在はオンラインで数人の日本人に英語を教えているらしい。
僕はとってもラッキーボーイだ。
ただでさえ、メーターを使わなかったり、夜だと通常の倍の金額を請求してきたりと、ぼったくりが横行するフィリピンのタクシー事情の中で、こんなにも親切な運転手を父に持つベロニカには、感謝をしてもしきれない。1台後ろのタクシーを捕まえていたら…
“I’m just doing what is right :)”
〈私はただ、正しいと思うことをやってるだけよ^^〉
こんなことをさらっと言える人間が、果たして日本を含めどれくらいいるだろうか。自分で言うのも気が進まないが、日本とは台所事情が異なるフィリピンで失くしたルイヴィトンである。返ってくるなんて、思いもしなかった。
閑話休題。
今回の旅行を通じて、フィリピン人には大きく2度助けられた。1度は洗濯ばあちゃん。そして2度目はベロニカ。
前も書いたが、なかなか人の情にどこまで触れていいのかわかりづらいこの国で、2度も助けられた。
そして思った。
一人前の人間になるためには、人を見ること。モノを見ること。
何かを語るときには、自分が直に触れたことを根拠にすること。
マクロの視点に加えて、この視点は絶対に持ち合わせておくべき必要のあるものであると、再認識した。
何はともあれ、祖母からの誕生日プレゼントが手元に返ってくることになって良かった。
僕が、道路脇で高々と上げた左手は、どうやら最高の宝くじを引き当てたようだ。